『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』
観劇レポート
日本大学芸術学部演劇学科3年
川端梨織
 観劇していて、まず何よりも舞台から熱を感じました。もう夜になると寒い季節でさらに野外劇、身体はとても冷えていました。ですが、舞台に目を向けると熱気が目に見えて感じることができ、不思議と暖かくなってきました。電気による熱というより、炎による熱という感じがしました。自粛期間でロスに陥っていた私に演劇が好きな理由を思い出させてくれて様々な方向から感動が湧き上がってきました。演者から発せられたエネルギー、圧、熱気を感じられる演劇の特権を生身で感じられました。
 また、私はこの舞台を通して生の人間どうしの繋がりというものを強く感じました。昭和時代が舞台だったということもあると思いますが、現代とは違い何か人に頼み事をするときもメールやLINEだけで済ますのではなく、電話をして実際に呼び出したり、人伝で住み込みを申し込んだりと直で人と人がコミュニケーションをとっている姿が心温まりました。恋敵どうしが直接相手に宣戦布告している様子も今ではあまり見られない光景なのではないかなと思いました。さらに野外劇の特権なのか、このご時世でも隣の人と間隔を空けず席に座れたことも直に人に触れる感覚が懐かしく感じられ嬉しかったです。演者の方々も観客と一緒に舞台を創っている感じがとても伝わってきました。特にカフェのママが歌いながら登場してくるシーンは気のせいかもしれないけれど私とママの目がばっちり合っていた感じがして嬉しくて楽しかったです。
 人と人との繋がりの面で、周りからの声援は時に自分自身を蝕んでいくことがあると痛感しました。期待されることはありがたいことかもしれません。しかし、期待される方の異変に気がつかず周りの期待だけ独り歩きしてしまった時それは声援ではなく悪いプレッシャーに即座に様変わりしてしまうことに恐怖を覚えました。人と人が生で関わるということは良くも悪くも何かが起こるのだと覚えておかなくてはならないなと思いました。
 池袋の中心での野外劇は、高い建物が建ち並ぶ都会と田舎が舞台の作品のチグハグが変な違和感がありそれがとても心地よかったです。私はバス停が見える位置で見ていたのですが、今まさに舞台が行われている奥でバスを待っているスーツを着たサラリーマンたちが何の演技もせずただそこにいるという状況が日常と非日常が混ざり合っている感じがして面白かったです。
 この作品を通して私が演劇が好きな理由を再確認でき、多くのエネルギーをもらいとても有意義な時間を過ごさせて頂いたことに感謝の気持ちでいっぱいになりました。