『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』
観劇レポート
日本大学芸術学部演劇学科3年
鈴木柚里子
 『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』は、私にとって初めての野外劇だった。今さら演劇学科らしく無いことを言うが、実は私はちょっと劇場空間が苦手だったりする。何が具体的に苦手なのかというのは自分でもよくわからないのだが、多分、閉鎖的で非現実な世界に飲み込まれそうになるのが怖いのだと思う。同じ感覚で映画館も苦手だ。だが、そのドキドキ感がなんとも言えない魅力となっていて、嫌いじゃ無いから実際演劇学科にいる。何故こんな話をしているかというと、今回は野外劇場ということで、その怖さや心が圧迫される感覚が一切無かったことに驚いた。穏やかな心で演劇の内容を楽しめたので、野外劇の世界を今後もっと体感してみたいとまず思った。
 前置きが長くなってしまったが、正直、野外の初めての感覚に想像以上に感動してしまい、終始フワッと遠い視点から観劇していた感もありその感想だけで終わってしまいそうなので、内容に触れていく。1960年代だという本編に入る前の導入で、「これから始まる世界はいつの時代の話なのか」「何年前の出来事なのか」という、私を含め見る側が一般的に思う疑問や、理解し易くするための確認がセリフとしてあったのだが、その回答が「何年前とかではなくあくまで今」「現在の話」「いつまで経っても限りなく続いている今」で、わかるようででも簡単に理解できないままストーリーが進んでいった。進んでいくにつれて、どうやっても今でしか無いと納得出来ている自分がいた。そのことを一番強く感じた瞬間は、劇も終盤、人間たちが正義のようなものと熱狂の集団になって躍り狂うすぐ近くで消防車のサイレンが鳴り響いた時だ。客席を含む全体に異様な空気が流れたのを覚えている。セリフの背景でまあまあ大きな音でサイレンが鳴り響き、狂った日本(NIPPON)と私が生きている現在である日本が重なったまさに目の前のそれは「今」でしかなかった。どんな昔の話だろうが、今に結びついた時、起こっている事実は「今」だった。池袋という都会のざわめきの中、生バンドの音楽と発されるセリフ、観ている人聴いている人…全ての組み合わせが奇跡なんだな、などとたまに空を見上げながら考えていたので、先に述べたように遠い視点になった。
 配信の良さはたくさんあると思っている派だったが、今回野外劇を体感して、配信には「今」という要素が欠けているのだと気付いた。やはり事は現場で起こるし現場でしか起こらないのだなあ。